「子どものせきがなかなか治らなくて苦しそう」「保育園で風邪が流行っていて心配」といった悩みを抱えるお母さんは多いかもしれません。
一般的に子どもの風邪は、1週間ほどで徐々に症状がよくなりますが、せきがひどくなる、喘鳴を伴った呼吸困難が出るなどの症状を伴う場合は、RSウィルスに感染しているかもしれません。
RSウィルスはとくに乳幼児では重症化しやすく、注意が必要な病気です。
この記事では、RSウイルスの症状や治療法、予防方法について解説します。RSウィルスについて心配事がある方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
RSウイルス感染症ってどんな病気なの?
RSウイルスは、風邪ウィルスの一種です。症状も風邪とよく似ていますが、重症化すると肺炎や細気管支炎をおこし入院が必要になることがあります。
RSウィルスにはどのような特徴があるのかについて説明しましょう。
RSウイルスとは
RSウィルスとは、Respiratory syncytial virus(レスピラトリーシンシチアルウイルス)の感染によりおこる、呼吸器感染症のひとつです。
生後1歳までに半数の子どもが感染し、2歳までにほぼすべての子どもが経験します。
大人になるまで何度もくり返しかかる病気ですが、大きくなるにつれて、軽い症状ですむことがほとんどです。
通常11月〜1月の冬季に流行しますが、年によって流行の時期は異なります。
RSウィルスは一般的な風邪よりも感染力が強いのが特徴で、症状が出る前や、症状が消えてからも人にうつすと言われています。
RSウイルスに感染する原因
RSウィルスに感染する主な原因は、接触感染と飛沫感染です。
- 感染した人との接触や、ウィルスが付着したものを触るなどの接触感染
- 感染した人のせきやくしゃみによる飛沫感染
子ども同士が集団生活をする保育施設などでは、感染リスクが高まることがあります。
RSウイルスに感染したら
RSウィルスに感染すると、4〜6日の潜伏期間を経て、症状が現れはじめます。
ここでは軽症の場合の症状と、重症化した時の症状についてそれぞれ説明します。
軽症のときの症状
RSウィルスに感染しても、軽症の場合は、以下のような症状が一般的です。
- 鼻水が出たり、鼻が詰まる
- 乾いたせきやたんが出る
- 38℃以上の発熱
- のどが痛んだり、イガイガする
- 目の充血や痒みが出る
これらの症状の多くは1週間ほどでなおります。
RSウィルスに感染した場合と風邪との大きな違いは、気管支炎や肺炎などを起こしやすいことです。
重症化する場合の症状
RSウィルスに感染した子どもが重症化した場合、以下のような症状や合併症が現れることがあります。
- 息苦しさや喘鳴(ゼーゼーした呼吸)などの呼吸困難
- ひどいせきたんが出る
- 高い熱が持続する
- 酸素不足により顔色が悪くなる
6カ月未満の乳幼児、低体重や早産児、基礎疾患がある子どもは、細気管支炎や肺炎になることがあります。乳幼児は呼吸器系の発達が未熟で気道が細いためです。
「ヒューヒュー」「ゼーゼー」の呼吸をしていたり、息を吸う時に胸のろっ骨のあたりがへこむような様子がみられたら、急いで病院を受診しましょう。
RSウイルスの検査・治療について
RSウィルスが疑われるとき、症状が比較的軽い場合や、1歳以上の幼児には一般的な風邪の治療と同じ対処療法を行います。
6カ月未満の子どもや基礎疾患があって重症化リスクの高い場合には、検査を行い確定診断(検査で確実に診断をつける)をすることもあります。
RSウィルスの検査について
RSウィルスの検査は、鼻の中に細い綿棒を入れて鼻水を採取して調べます。15分程度で迅速診断が可能です。
ただし、RSウィルスが疑われる全ての子どもに行う検査ではありません。
1歳未満の子どもや、入院中の子どもに限られ、保険が適用される場合に行います。
新生児や生後2〜3カ月未満の乳児では無呼吸発作などの症状をおこすことがあるため、積極的に検査をします。
RSウィルスの治療法について
RSウィルスは特効薬がないため、それぞれの症状を和らげるための対症療法がおもな治療です。せきやたん・鼻水が多いときは、せき止めやたんを出しやすくする薬、または呼吸を楽にするための吸入などで、呼吸状態を改善する必要があります。
高熱のときは解熱剤を処方される場合もあるでしょう。
また、重症化リスクが高い子どもに対しては、予防投与としてシナジスというワクチンを打つことが認められています。
ワクチンの対象は、36週未満の早産で生まれた子どもや、基礎疾患のある子どもに限られています。
自宅で看病するときの注意点は?
自宅で看病するときは、なるべく安静にして過ごしてください。
鼻水が出ているときはこまめに鼻をかませ、吸引し、部屋の加湿を心がけましょう。
また、せきでなかなか眠れなかったり、ミルクが飲めなかったりすることもあるので、こまめに水分をとらせて体力が消耗しないようにします。
熱が下がっても体の中にウィルスが残っているので、せきなどの症状がよくなるまでは、家族内での濃厚接触や集団生活は控えましょう。
RSウイルスの感染予防について
RSウィルスの予防は、新型コロナウィルス感染症などの感染予防と基本的には同じです。
以下のような感染予防が必要です。
- 「マスク」「うがい」「手洗い」を行い、ウイルスが体内に入ってこないように防ぐ
- せきなどの症状があるときは、マスクを着用しまわりの人にうつさないようにす
- 流水や石けんによる手洗い、アルコールによる手指の消毒をしっかり行う
- 子どもたちが触れるおもちゃなどはアルコールや次亜塩素酸ナトリウムで消毒する
RSウィルスの流行期には、生後6カ月未満の赤ちゃんを連れて外出する時は人混みを避けましょう。きちんと対策することで、RSウィルスに感染するリスクを下げられます。
RSウイルスの対処を知って子どもの健康を守ろう
RSウィルスは誰でもが繰り返しかかる病気ですが、年齢が大きくなるにつれ免疫力が高まります。症状が軽いときは、ふつうの風邪と同じような経過をたどります。
ただし、生後6カ月未満の乳児やリスクの高い子どもが感染した場合、せきが2週間以上続き呼吸が苦しいなどの症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
また、このような小さな赤ちゃんや、重症化リスクの高い子どもたちが感染しないように、感染予防に努めることが大切です。日常生活での予防を心がけましょう。